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2023/12/17(日) 180323.63

https//news.yahoo.co.jp/articles/4bf8f43d62bb2ceabb5e322ddf56ff6ba0e7ddfd?page=2
「ギョアー!」。
千葉県内ではいま、毎晩のようにキョンの恐ろしい鳴き声が響き渡っている。
房総半島に溢れ返ったこの小さな草食獣が、次なる縄張りを求めて向かう先は―。その足跡を追った。
※略

■キョンが河を渡った⁉
「また、イノシシやシカの報奨金が1万円以上なのに対し、キョンは体が小さいため6000円程度しかもらえません。
1匹から2キロ程度の肉しか取れないので、コストを考えると割に合わない。積極的にキョンを獲ろうという猟師は多くありません」
前出の原田代表によると、奈良県などでは伝統工芸品にキョン皮を使用している地域もあり、千葉県で捕獲したキョンを輸出してほしいという依頼もあるという。
ただ、「キョン皮をはぐ作業の労賃は1枚200~300円」とのことなので、やはり採算は合わないようだ。

人間側の事情を後目に、その数を増やし続けるキョン……。
だが、取材を継続していると、さらに驚きの情報が飛び込んできた。何と、キョンが利根川を渡ったというのだ。
茨城県自然博物館の後藤優介副主任学芸員が明かす。
「今年9月に茨城県内でキョンが確認されました。これで確認された情報は3件目。栃木や福島まで広がる前に食い止めなければと、茨城県内でも警戒が強まっています」

キョンは水を怖がるため、川は渡れないと言われていた。それが茨城に出没したとはどういうわけか。
「キョンは個体ごとに縄張りを持ち単独行動する動物のため、縄張りを持てなかった若い個体が少しずつ北上していると見られます。
県境を越える個体が出るほど、千葉県内では数が増えすぎたということでしょう。車にひかれたのか、茨城と接する橋では、キョンの死体も目撃されています」(前出・千葉県自然保護課の市原副課長)

■東京は目と鼻の先
キョンの行く先は北だけではない。西にも勢力を伸ばしている。野田市や我孫子市、さらには柏市でも目撃情報が急増しているのだ。
柏市の農家が証言する。
「もう3回もキョンを見ていますよ。一度目は市内の林のなかで急斜面を駆け上がる姿を目撃しました。二度目は蛍を探しに行ったとき。
『ギョン! 』という今まで耳にしたことのない叫び声を聞きました。この2回はいずれも林や山でしたが、三度目は柏市内の中心部に近い場所で目撃しました。
住宅街のなかをキョンが疾走していたんです。知り合いにも目撃している人は大勢いますから、キョンが柏市まで来ていることは間違いありません」
言わずもがな、柏市から東京は目と鼻の先だ。
県境の江戸川を渡れば、『男はつらいよ』でおなじみの柴又・帝釈天までわずか16km程度しかない。キョンは東京へと極めて接近しているのだ。

さらに、関西でもキョンの目撃情報はあるという。前出の「猟師工房」の原田代表が、声を潜めて明かす。
「半年ほど前でしょうか。和歌山県に住む知人から、夜な夜な聞き慣れない動物の声がすると相談を受けたんです。
そこで録音された鳴き声を聞かせてもらうと、明らかにキョンの鳴き声でした。
千葉や伊豆大島でもそうですが、飼育されていたキョンが脱走したことで爆発的に繁殖している。
和歌山にもかつてキョンを飼育していた施設があるため、そこから逃げた可能性は否定できません」

千葉から茨城へと生息域を広げたことからも明らかなとおり、キョンは川を渡ることができる。
和歌山県での「鳴き声情報」が本当だとすれば、県境近くを流れる紀ノ川を渡り、大阪へと移動する懸念もある。
本誌はキョンの鳴き声を録音した和歌山県内の猟師にも取材を申し込んだが、「確実に生息を確認できたわけではないので……」と、言葉を濁すのみだった。

東京や大阪などの大都市にとっても、キョンの大増殖はもはや他人事ではない。深夜、寝静まった都心の住宅街に、
「ギョアー!」
というキョンの恐怖の鳴き声が響く日が近づいている。

(https//geikuchi.com/archives/156364)